「何日も出ていない」
「出てもすっきりしない」
「お腹が張って苦しい」
こうした悩みは、便秘かもしれません。
便秘というと、「毎日出ないこと」と思われがちですが、実はそれだけではありません。毎日排便があっても、便が硬い、強くいきまないと出ない、出たあとも残っている感じがする、お腹が張ってつらい。このような状態も便秘に含まれます。排便の回数には個人差があり、気持ちよく出せて困っていなければ、毎日出なくても必ずしも便秘とは限りません。目安として、排便回数が週3回未満の場合は医療機関に相談してみるとよいとされています。
便秘とは、便を「十分に・快適に」出せない状態

便秘は、腸の中に便が長くとどまったり、便が硬くなったりして、うまく排便できなくなる状態です。
食べたものは腸を通る間に水分が吸収され、残りが便になります。ところが、腸の中に便が長く残ると、水分が吸収されすぎて便が硬くなります。硬くなった便は出にくくなり、強くいきむ必要が出てきます。すると排便がつらくなり、また我慢してしまう。こうして便秘が長引くことがあります。
つまり便秘は、単に「出る・出ない」だけの問題ではありません。
「すっきり出せているか」「苦痛がないか」が大切です。
便秘になると何がよくないの?
便秘になると、まず感じやすいのがお腹の張りです。便やガスが腸にたまることで、お腹が重い、苦しい、食欲がわかない、気分がすっきりしないと感じることがあります。
また、便が硬くなると排便時に強くいきむことが増えます。これが続くと肛門に負担がかかり、切れ痔やいぼ痔のきっかけになることもあります。排便時に痛みがあると、「また痛いかも」と思ってトイレを我慢してしまい、便秘がさらに悪化することもあります。
便秘は体だけでなく、生活の質にも影響します。
お腹が張って服が苦しい。仕事や家事に集中しにくい。外出先でお腹の調子が気になる。こうした小さな不快感が続くと、毎日がなんとなく重たく感じられることもあります。
特に注意したいのは、便秘の裏に別の病気が隠れている場合です。食事量の少なさ、運動不足、ストレス、水分不足だけでなく、薬の影響や腸の病気が便秘の原因になることもあります。
年齢別に見る便秘の特徴
便秘は、年齢によって原因や注意点が少しずつ変わります。
「便秘=大人だけの悩み」と思われがちですが、赤ちゃんから高齢者まで、どの年代にも起こります。
赤ちゃん・幼児の便秘
赤ちゃんや小さな子どもの便秘は、母乳やミルクの量、汗をたくさんかいたことによる水分不足、離乳食の開始、食事内容の変化などがきっかけになることがあります。母乳から人工乳へ変わったとき、離乳食が始まったときなど、食べるものが変わる時期は便のリズムも変わりやすいです。
幼児期では、排便時に痛い思いをしたことがきっかけで、うんちを我慢する子もいます。
一度我慢すると、便は腸の中で硬くなります。硬い便を出すとまた痛い。するとさらに我慢する。これが子どもの便秘でよくある悪循環です。子どもの便秘は早く治療を始めたほうが、その後の経過がよいとされています。
「何日も出ていない」「排便のたびに泣く」「お腹が張っている」「便に血がつく」などがある場合は、小児科で相談すると安心です。
小学生・中学生の便秘
小学生になると、学校でトイレに行きにくいことが便秘の原因になることがあります。
「恥ずかしい」「休み時間が短い」「友達に知られたくない」と思って我慢しているうちに、便意を感じにくくなることがあります。
また、朝食を食べない、野菜が少ない、運動量が少ない、水分をあまり取らないといった生活習慣も関係します。子どもの便秘は珍しいものではなく、小学生でも便秘に悩む子がいることが報告されています。
この年代では、「ちゃんとトイレに行きなさい」と叱るよりも、朝に少し余裕を作ることが大切です。朝食を食べて、登校前にトイレへ行く時間を作る。これだけでも排便リズムが整いやすくなります。
10代・20代の便秘
10代から20代では、生活リズムの乱れやダイエットが便秘のきっかけになりやすいです。
食事量を極端に減らすと、便の材料そのものが少なくなります。さらに、食物繊維や水分が不足すると、便が硬くなりやすくなります。ダイエット中に便秘になった経験がある人は多いのではないでしょうか。
また、学校、仕事、アルバイト、夜更かしなどで睡眠や食事の時間が不規則になると、腸のリズムも乱れやすくなります。ストレスも便秘を引き起こす大きな要因のひとつとされています。
この年代では、「食べない」より「整えて食べる」ことが大切です。
野菜、海藻、きのこ、豆類、果物、主食を適度に取り入れ、水分もこまめに取る。無理なダイエットは、便秘だけでなく体調全体を崩す原因になります。
30代・40代の便秘
30代・40代は、仕事や家事、育児などで自分の体調が後回しになりやすい時期です。
朝は忙しくてトイレに行く時間がない。昼食は外食やコンビニが多い。運動する時間がない。ストレスが続く。こうした生活が重なると、便秘が慢性化しやすくなります。
特に女性では、月経周期や妊娠、出産、ホルモンバランスの変化によって便秘を感じやすくなることがあります。若い年代では女性に便秘が多い傾向があり、年齢を重ねるにつれて男女ともに便秘を感じる人が増えるとされています。
この年代で大切なのは、完璧な生活を目指すことではありません。
朝にコップ1杯の水を飲む。朝食を少しでも食べる。昼食にサラダや味噌汁を足す。エレベーターではなく階段を使う。小さな習慣を積み重ねることが、便秘対策につながります。
50代・60代の便秘
50代・60代になると、加齢による腸の動きの変化、運動量の低下、食事量の減少などが便秘に関係しやすくなります。
また、高血圧、糖尿病、痛み止め、精神的な不調の薬など、服用している薬が便秘に関係することもあります。便秘を引き起こす薬があることも知られているため、「最近薬を飲み始めてから便秘になった」という場合は、自己判断で薬をやめず、医師や薬剤師に相談することが大切です。
この年代で急に便秘になった場合や、血便、体重減少、強い腹痛、便が細くなったなどの変化がある場合は、早めの受診をおすすめします。便秘はよくある症状ですが、いつもと違う変化には注意が必要です。
高齢者の便秘
高齢になると、便秘に悩む人はさらに増えます。加齢とともに便秘は増加し、若い頃は女性に多く見られる一方、高齢になると男女差が少なくなるとされています。
高齢者の便秘には、いくつもの原因が重なりやすいです。
食事量が減る、水分摂取が少なくなる、筋力が落ちる、歩く機会が減る、薬の種類が増える、トイレまで行くのが大変になる。こうしたことが少しずつ重なって、便が出にくくなります。
高齢者では、便秘を「年のせい」と思って我慢してしまうことがあります。
しかし、便がたまりすぎると食欲低下、腹部膨満感、吐き気、不眠、活動量の低下につながることもあります。
およそ3日以上排便がない場合、下剤を使って1〜2日たっても便が出ない場合は相談の目安とされています。また、おならが出ない、腹痛がある、吐く、お腹がひどく張る場合は、腸閉塞の可能性もあるため、すぐに医療者へ伝えることが大切です。
便秘を防ぐためにできること
便秘対策の基本は、食事・水分・運動・生活リズムです。
まず、食事では食物繊維を意識しましょう。
野菜、海藻、きのこ、豆類、果物、玄米や雑穀などを少しずつ取り入れると、便のかさが増え、腸が動きやすくなります。ただし、急に食物繊維を増やすとお腹が張ることもあるので、少しずつ増やすのがコツです。
水分も大切です。
便は水分が少ないと硬くなります。朝起きたとき、食事のとき、入浴後など、こまめに水分を取る習慣を作りましょう。
運動は、激しいものでなくてもかまいません。
散歩、ストレッチ、階段の上り下り、家事で体を動かすことも腸への刺激になります。日ごろから無理のない範囲で体を動かすことがすすめられています。
そして、便意を我慢しないこと。
便意を感じたら早めにトイレに行くことが大切です。我慢しすぎると腸の活動が悪くなり、便意を感じにくくなることがあります。毎日決まった時間にトイレへ行く習慣も、排便リズムを整える助けになります。
便秘で受診したほうがよいサイン
便秘は生活習慣で改善することもありますが、受診したほうがよいケースもあります。
特に、急に便秘になった、血便がある、強い腹痛がある、吐き気や嘔吐がある、お腹がひどく張る、体重が減ってきた、便が細くなった、下剤を使っても出ない、便秘と下痢を繰り返す。このような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
便秘薬についても、自己判断で長く使い続けるのは注意が必要です。下剤は自分の判断で始めたりやめたりせず、医師や薬剤師に相談することがすすめられています。
まとめ
便秘とは、便が出ないだけでなく、便が硬い、出しにくい、すっきりしない、お腹が張るといった状態も含みます。
放っておくと、お腹の張り、腹痛、食欲低下、痔、気分の不快感、生活の質の低下につながることがあります。年齢によって原因は少しずつ違い、子どもでは我慢や食事の変化、大人では生活リズムやストレス、高齢者では食事量や運動量の低下、薬の影響などが関係しやすくなります。
便秘対策は、特別なことをするよりも、毎日の小さな見直しが大切です。
朝食をとる。水分をこまめに飲む。野菜や海藻を一品足す。少し歩く。便意を我慢しない。
それでも便秘が長く続く場合や、いつもと違う症状がある場合は、無理に我慢せず、医療機関に相談しましょう。
