近年、日本におけるがんの罹患率は高まりを見せており、なかでも大腸がんは最も多いがんの一つとなっています。生活習慣の変化、とくに食生活の欧米化が一因とされ、若い世代を含めた幅広い年齢層で発症が増加しています。
私たちの毎日の「食べ方」が、がんのリスクと深く関係していることは、あまり知られていないかもしれません。

大腸がんと食生活の関係:日本人にとっての注意点
大腸がんは現在、日本人にもっとも多いがんの一つとなっており、特に高所得国でその発症率が増加しています。米国がん協会の調査によると、若年層における早期発症の増加も世界的に確認されており、注目すべき傾向とされています。
●欧米型の食生活と大腸がんリスク
大腸がん増加の背景には、「食の欧米化」があります。欧米型の食事は、肉類や乳製品といった動物性脂肪が多く、野菜や穀物、豆類などの植物性食品が不足しがちです。この結果、食物繊維の摂取量が減少し、腸内環境に悪影響を及ぼします。
動物性脂肪は体内で胆汁酸に分解され、腸内の悪玉菌によって「二次胆汁酸」という発がん性物質に変化します。これが大腸がんのリスクを高める原因のひとつとされています。
●日本人の食物繊維摂取量の現状
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、日本人の食物繊維の平均摂取量は18.4gにとどまっており、特に20代の若者では男性17.5g、女性14.6gと、目標値を大きく下回っています。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、健康のためには1日25g以上の食物繊維摂取が望ましいとされています。
●食物繊維の大腸がん予防効果
食物繊維は腸内で発酵し、短鎖脂肪酸(とくに酪酸)を生成します。酪酸は腸内細胞のエネルギー源として働き、細胞の正常な機能を保つことで、がん細胞の成長を抑える可能性があります。
また、食物繊維は腸の蠕動運動を促進し、便通を良くすることで有害物質の滞在時間を短縮する働きもあります。これらの作用が、大腸がんの予防に繋がると考えられています。
大腸がんの予防には、食生活の見直しが大切です。動物性食品を控えめにし、野菜・豆類・全粒穀物などの植物性食品を積極的に取り入れましょう。
